歯周病が全身に及ぼす影響
歯周病は歯に影響を与えるだけの病気ではありません。歯周病菌は、血液に乗って全身にいきわたり、全身の臓器で悪さをします。下記は、歯周病が関係していると思われる全身疾患です。一部を解説いたします。
狭心症・心筋梗塞
狭心症や心筋梗塞は、動脈硬化により心筋に血液を送る血管が狭くなったり、ふさがってしまうことにより、心筋に血液が行き渡らなくなり、重篤な場合には死に至ることもある病気です。
かつては、動脈硬化と歯周病は、あまり無縁の病気のように捉えられていましたが、歯周病原因菌などを含むプラークが血管内に発生し、動脈硬化を悪化させることが分かっています。さらには、プラークが剥がれ血の塊が出来てしまうと、血管をつまらせる原因を作ります。
脳梗塞
脳梗塞も、狭心症や心筋梗塞と同じで、脳の血管にプラークが詰まったり、頸動脈や心臓から血の塊やプラークが飛んで来て脳血管が詰まることによって引き起こされる可能性のある病気です。歯周病を持つ人は、脳梗塞のリスクが2.8倍になると言われるほどです。
糖尿病
実は、以前から、歯周病は糖尿病の合併症の一つと言われています。実際、糖尿病の人は歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多く、さらに最近の研究結果では、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。つまり、歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。
逆に、歯周病治療を行うことで、糖尿病が改善するということもわかっています。
妊娠性歯肉炎
一般的に、妊娠すると歯肉炎にかかりやすくなり、これらは女性ホルモンが大きく関わってくるといわれています。その理由は、エストロゲン(女性ホルモン)がある特定の歯周病原細菌の増殖を促すということと、歯肉を形作る細胞がエストロゲンの標的となるためと言われています。
また、妊娠終期には月経時の10~30倍になるプロゲステロンというホルモンが、歯周病の炎症の元であるプロスタグランジンを刺激します。このため妊娠中期〜後期にかけて、妊娠性歯肉炎が起こりやすくなります。
また、妊娠終期には月経時の10~30倍になるプロゲステロンというホルモンが、歯周病の炎症の元であるプロスタグランジンを刺激します。このため妊娠中期〜後期にかけて、妊娠性歯肉炎が起こりやすくなります。
低体重児早産
最近の研究結果から、妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険度が高くなることが分かっています。これらは、歯周病細菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するのではないかと言われており、低体重児や早産のリスクは7倍にものぼるといわれている深刻な問題です。タバコやアルコール、高齢出産などよりもはるかに高い数字です。
誤嚥性肺炎
嚥下機能が低下している高齢者が、誤って食べ物や異物気管や肺に飲み込んでしまうことで発症する肺炎が誤嚥性肺炎です。重篤な場合には死に至る病気です。
誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、歯周病菌であると言われており、口腔内に歯周病菌がある場合には、重篤な症状を起こす場合があるので、注意が必要です。
骨粗鬆症
閉経による卵巣機能の低下によりおこる、閉経後骨粗鬆症は、エストロゲンというホルモン分泌の低下により発症します。閉経後骨粗鬆症の患者さんの歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのが、エストロゲンの欠乏です。
エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなるとともに、歯を支える歯槽骨ももろくなります。また、歯周ポケット内では、炎症を引き起こす物質が作られ、歯周炎の進行も進みます。
メタボリックシンドローム
詳しいメカニズムは解明されていませんが、歯周病の病巣から放出されるLPS(歯周病菌由来の毒素)やTNFαは脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇されると言われています。
また、重度歯周病患者では血中CRP値が上昇するため、動脈硬化や心筋梗塞発症のリスクを高める事に密接に関与し、これらの慢性炎症が身体の老化を促進するという研究結果もあるほどです。
(参考:日本臨床歯周病学会)