2017
5/29
【歯の破折を防止】ファイバーコアで神経を抜いた歯を温存する
歯の破折
今回は、激烈な痛みと腫れを訴えられて来院された患者様の事例をご紹介いたします。この患者さんは歯の破折していました。実は、表面から見てもレントゲンを撮ってみても、異常な所見は見られなかったのですが、いざ金属と土台を外してみると、見事にパックリと縦に折れてしまっていました。これは、被せてあった金属を除去しないと分からないので、歯の破折を疑って冠を外す必要が出てきます。
こうなると、肉眼でも縦の破折線を見ることが出来ると思います。(写真参照)
これは、抜髄といって神経を取り除く根管治療後に見られるケースです。(根管治療についてはこちらのブログ記事を御覧ください)
この患者様のケースのように、神経を除去した後、長い年月が経過してしまうと歯が折れてしまうことが数多くあります。これは、歯の恒常性を維持するための血液供給が絶たれるため起こることです。自然と、歯がもろくなってしまうわけです。
そのため、こういった歯の破折を防ぐ目的で近年登場したものが『ファイバーコア』です。『ファイバーコア』とは虫歯となった部分を削り、土台としてしん棒をいれる治療です。もろくなってしまった根管治療後の歯を強化することができます。
例えば、地震の多い日本では、家やビルを建てる時に耐震強化という言葉を聞いたりする事が多いと思います。どれ位の震度まで耐えられるかを推し量り、大地震がきても倒壊しないように建物自体を強化する方法です。
原理は、この耐震性の強化のように対処するのが『ファイバーコア』です。耐震強化とは、地震の揺れと同じように動くことで建物の倒壊を防ぐ構造になっているそうです。実は、歯もまったく同じ理由なのです。おもしろいですね。
ファイバーコアとメタルコア
実は、この『ファイバーコア』ですが、日本ではつい最近まで金属の土台が主流となっていました。これは『メタルコア』と呼ばれています。しん棒が金属になっていて、金属の土台は強く折れませんが、人間の歯や根っこは金属のように強く硬くはありません。
実は、私たちの歯は何らかの力で揺れたり、硬い食べ物を食べた際には、歯や歯根がたわむなど様々な動きをします。
そのため、従来の金属の土台(メタルコア)は硬すぎてしまうために、強い力が歯に加わると歯の方が負けて折れてしまう事が数多くありました。それを回避するために、当院では(歯を守るために)可能な限り『ファイバーコア』を推奨して診察を行っております。
ファイバーコアとはグラスファイバーの繊維を何重にも束ね、一つの棒状にして専用のレジン(特殊な樹脂)と一体化したものです。象牙質とほとんど同じ硬さになっています。そのため歯や歯根に力が加わった時に一緒になって揺らいでくれる、いわば耐震性の土台です。
グラスファイバーの土台は歯の根っこをしっかりと守ってくれます。硬い食べ物や、歯ぎしりなどで過度な力が加わって土台が割れてしまっても歯の根っこを保存することが出来れば何度でもやり直しすることが可能です。
上の写真は歯が変色しており、神経を除去してからかなりの年月が経過していると予測できます。
また、残っている歯質も少なく、ブリッジ(歯の欠損を補うために両脇の歯を利用して人工の歯を作る方法)の支台であることを考慮すると、従来の金属の土台ですとかなりの不安が残ります。そこで、この患者さんは、今回は上記のファイバーコアを直説法(技工所には出さず口腔内で製作する方法)にて製作しました。
つまり、歯を出来るだけ長持ちさせるために考案されたのがファイバーコアです。
<ファイバーコアのメリット>
(1)歯と同じようにたわむため、歯の破折が起こりにくい
(2)歯の変色が起こらない
(3)歯グキが黒ずむことが無い
(4)金属アレルギーが起こらない
メタルコアなど主に銀合金が使われている土台は、保険診療内の治療で行われます。
しかし、メタルコアにすると、歯の土台は歯茎に浸透してしまい黒ずんだり、歯が割れやすくなったりするというデメリットがあります。そのようなメタルコアの決定をカバーするために、ファイバーコアをオススメしています。
ただし、ファイバーコアの費用は保険外診療となりますので、料金についてはお気軽にご相談ください。
当院では、できるだけご自身の歯を残していただくよう、極力削らない治療を推進しています。歯を削ったり、歯の神経を抜いたりすると、どんどん歯の寿命は短くなってしまいます。
そのため、できるだけご自身の歯の寿命を伸ばしてあげるための治療として、ファイバーコアなどの治療を推進しています。歯の根が割れてしまうと抜歯になってしまうことが多いということが理由の一つです。
もちろん、歯科治療に何を求めているかは、患者さんの価値観によって異なることと思います。ただし、ご自分の歯を少しでも長持ちさせたいという思いは共通のものではいでしょうか。そのためにも、患者様には様々なメリット・デメリットをご説明し、ご自身で治療法を選んでいただけるような説明を心がけています。
お気軽にご相談ください。