2018
3/07
【歯周病の治療】外科的治療まとめ
重度歯周病になってしまったら
当院は、主に歯周病治療に力を入れている歯科医院です。成人の約8割が罹患しているという国民病である歯周病は、私達の最も身近なお口の中の病気であることは、これまで何度もブログでご説明してきました。
特に、歯周病という病気の特徴的な所は、急に悪化する病気ではなく、静かに徐々に進行していく病気である所です。できるだけ早期に発見し治療することが大事な疾患ではありますが、頭で分かってはいるものの、ついつい放置してしまい悪化の一途をたどる場合もあります。
再度、歯周病の進行についておさらいします。
主に歯周病は4段階に分類されます、歯肉炎、軽度歯周炎、中度歯周炎、重度歯周炎です。できるだけ症状の軽い段階で対処することが、歯周病治療の王道ですが、今回のブログでは、重度歯周炎になってしまった場合の、外科的療法についてまとめていきます。
当医院のホームページでも、歯周外科療法については記載してありますが、今回はブログ記事に、一つの記事にまとめてご説明しますので、是非御覧ください。
歯周基本治療:歯周ポケットの測定とスケーリング
歯周基本治療とは、歯周疾患に対してまず初めに行われる処置であり、炎症の軽減、急性症状の緩和などを目的に、歯周外科手術に先立って行われるものです
歯周病治療の基本は、歯垢やプラークを綺麗にし、歯や歯ぐきに汚れを付着したままにしておかないことです。毎日の歯磨きで、ある程度の食物残渣は除去できますが、毎回毎回、必ず磨き残しが発生します。
その磨き残しに、沢山の細菌が付着していきネバネバした物質になっていきます。これがプラークです。このプラークが唾液中のカルシウムと反応し、歯石と呼ばれる硬い塊になっていきます。残念なことに、ここまでくると、ご自宅での歯磨きでは除去できません。
歯科医院にて専用の器具で除去しなければなりません。
よって、歯周病治療の基本は、プラークと歯石の除去です。スケーラーという器具で、歯を綺麗にしていきます。より深い部分にある歯石はルートプレーニングという方法で除去します。
また、同時に、歯周ポケットの測定や出血の有無も調べます。現在、歯周ポケットがどれくらいの深さにあるかを知ることで、歯周病の進行状況が可視化できるからです。
歯周基本治療において良好な結果が得られない場合や、中等度以上の歯周病においては
以下の外科処置が必要となります。
歯周外科治療
歯周外科療法 1:フラップ手術
次にご説明するのは外科的処置であるフラップ手術です。
深く形成されてしまった歯周ポケットをひきしめ、スケーリングやルートプレーニングでもとりきれない歯垢や歯石を取り除きます。
歯ぐきを切開し、歯根や歯槽骨を露出させて、綺麗に取り除きますので、確実に歯垢や歯石を乗り除くことが可能です。
切開して処置をしますが、手術中の痛みはありませんのでご心配は要りません。
全ての歯周外科処置の基本となる手術です。
歯周外科療法 2:血小板濃縮フィブリンによる再生療法
次に中等度~重度歯周病の方への再生療法についてご説明いたします。再生療法とは、その名のごとく、組織を再生させる治療の事です。
歯周病という病気は、歯の周りの組織が正常な状態から逸脱してしまっている状態です。
主に歯を支えている周囲の歯槽骨が細菌からでる毒素によって溶けてしまい支えがなくなっており、その毒素に罹患した部分の歯周組織の再生や回復を早めるために、
血小板濃縮フィブリンによる再生療法を行います。
この再生療法は、完全自己血液を使います。当院では、患者様から採取した血液を遠心分離して作る、最新の再生療法(AFG CGF)をおこなっております。
ご自身の血液で治療を行いますので、非常にリスクの低い治療になります。
血液中に含まれるフィブリンは、損傷された組織の再生、治癒を促進させる成長因子を多く含んでおり、傷口をふさいで患部を治癒させる役割を担います。
これを、ご自身の血液から取り出し利用することで、骨や歯周組織の再生や回復を早めます。
詳しくは、再生療法のページを御覧ください(https://www.ota418.jp/laser.html)
歯周外科療法 3:歯ぐきの外科療法法
さらに、もう一つ外科療法がありますのでご紹介いたします。それは歯ぐきの再生療法と言われるものです。薄い歯肉、付着歯肉の不足、小帯の高位付着など、歯周病を悪化させる原因を取り除くために行われます。
歯周病が進行してしまうと、歯肉退縮(歯ぐきが下がってしまったり、歯根が露出してしまうこと)が起こります。歯が長くみえてしまうのは歯周病が治ったため、歯肉の炎症がおさまり引き締まったため、起こってしまいます。これをできるだけ元通りに再生させる治療があります。
これら、歯ぐきの再生療法は、結合組織移植術や歯肉弁側方移動術、歯肉弁歯冠側移動術、フリーグラフトなどがあります。それぞれ、歯ぐきを切開して改善させる外科手術です。
詳しくは、再生療法のページを御覧ください。(https://www.ota418.jp/reproduce.html)
歯周外科療法 4:骨移植法
歯周病における骨移植法は、重度歯周病により骨が失われてしまった場合に行われる外科手術です。骨が無くなってしまった部分に骨を移植することで、深い歯周ポケットを減少させ、歯の動揺を落ち着かせることもできます。また骨の平坦化により、ブラッシングが容易になり、残された歯の健康を維持することにもつながります。
骨移植法には自家骨もしくは人工骨を使用します。
自家骨移植は、ご自身の骨を使い骨移植する場合です。ご自身の顎などから移植する骨を採取します。最近では医療技術の発展とともに、骨を採取するためのおおがかりな手術が軽減され、身体への負担も少なくなってきています。
もう一つは、自分の骨ではない人工骨です。
日本で使用される人工骨は、β三リン酸カルシウム(β―TCP)純度98%以上のものか、ハイドロアパタイト系(HA)の2種類が主に使用されています。自家骨移植よりも身体への負担が少ないので比較的安心です。
当院では自己血液血小板濃縮フィブリンと人工骨を用いて骨誘導再生をおこなっております。濃縮フィブリンに含まれる成長因子により、損傷治癒を促進させ術後の不快症状を大幅に軽減することができます。
歯周外科療法 6:エムドゲイン法
特殊なたんぱく質によって、歯周組織を再生させる治療が、エムドゲインを使用した歯周外科治療となります。エムドゲインとは、歯肉、歯槽骨、歯根膜、セメント質など、歯を支える歯周組織の再生をうながす、エナメル基質タンパクの製品名です。エナメル基質タンパクは、歯が出来る過程を研究している時に発見されました。エムドゲインゲルを、歯周病で破壊された歯周組織に塗布し歯周組織を再生させます。
エムドゲインは、1997年に臨床応用されて以来、約20年にわたり、副作用の報告もなく安全性の高い治療薬として、世界中で用いられています。また骨の移植術や歯ぐきの外科手術と併用することで高い効果が期待できます。
このエムドゲインは、大学病院や、歯科開業医での臨床に取り入れられ、歯周病治療に大変役立っています。
歯周外科療法7:GTR(組織再生誘導)法
GTR法とは歯周病などにより破壊されてしまった、歯肉・歯根膜・歯槽骨などの歯周組織の再生を行う治療法です。深くまで進行した歯周ポケットを、骨を再生することにより改善させることが出来ます。
歯周ポケット内をクリーニングし、GTRメンブレンというと特殊な膜で隔壁を作って歯槽骨が再生するスペースを確保し、再生しやすい環境を与えることで歯周組織の再生を誘導する方法です。骨移植法と併用して用いられることも多く、治療が難しいとされる根分岐部病変(歯根の分岐部の歯槽骨の欠損)などでも対応が可能です。
時間がかかりますが、比較的、お体に負担のかからない治療法です。
以上のように、歯周病における外科治療は、さまざまな治療法があります。
患者さんの状況にあわせ、お体にご負担の無いよう、多くの治療の選択肢を吟味して、治療計画を立てていきます。
難しい治療法も沢山ありますので、ご不明な事はなんでもご質問ください。分かるまで丁寧にご説明させていただきます。
歯周病は、放置しておけば、どんどん悪化していってしまいます。できるだけ早く治療を開始することが望ましいのですが、重度歯周病になってしまった場合でも、様々な治療の選択肢で治療が可能になりますのでお気軽